Petrarca, F., Canzoniere
68
貴方の土地の聖なる姿は
私に過去の苦しみを嘆かせしめる,
「さあどうした,哀れな者よ,立ち上がれ」と声をかけ,
天へと登る道を私に示す.
4
だがこうした想いに今ひとつの想いが挑みかかり,
私にこう語る,「何故お前は逃げるのか.
忘れているのでなければ,我らの婦人と会うため
立ち返る時は今もう過ぎ去ろうとしているのだ」と.
8
そのように語るのを聴くと私の胸のうちは
凍りつく,さながら不意をついて
悲報を聞かされた者のごとく.
11
するとこの思いは引き下がり,初めの想いが戻ってくる.
どちらが勝つのか,私は判らない.だが今に至るまで
両者の戦いは一度ならず繰り広げられてきたのだ.
14
COM. ――前後のふたつ(Rvf. 67, 69)と合わせて1337年初めのローマ旅行の折の作と考えられる.
1. 貴方の土地:ローマ.この詩が宛てられているのはOrso dell'Anguillaraと思われる.
2. 過去の苦しみ:詩人が身に受けた恋の苦しみ.
6. 何故お前は逃げるのか:ラウラから.
8. 立ち返る:ローマからプロヴァンスへと.
2017/11/04
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