Petrarca, F., Canzoniere
67
風に破れ散らされた波が泣き咽ぶ
ティレニア海の左岸にて
不意に我が目に入ってきたのはあの気高き樹,
そのためには数多の紙葉が費やされるべきあの樹.
4
我が心のうちに沸き起こる愛が,
あの黄金の三つ編みを思い起こさせ
私を追い立てたその先には,草葉に隠れた流れがあって
其処へ私は落ち込んだ,さながら息絶えた人のごとく.
8
そして森と山の狭間にひとりきりとなると
我が身の上を恥じた.高貴な心にはそれだけで
充分なため,他の刺激は不要だった.
11
せめてもの我が慰めは眼ではなく足を濡らして
いつもの姿と違うこと
――四月が常より寛大に
眼からも涙を乾かしてくれればなおよいものを.
14
COM. ――続くふたつ(Rvf. 68, 69)と合わせて1337年初めのローマ旅行の折の作と考えられる.
2. ティレニア海の左岸にて:北から南へと船を進める形で見て左側.
3. 気高き樹:月桂樹.
13. いつもの姿と違うこと:普段は悲しみの涙に眼を濡らしている.
四月:ラウラとの出会いの月.Cf. Rvf. 211.
2017/11/04
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