Petrarca, F., Canzoniere

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かつては泣き,今は歌う.それはあの生ける太陽が
天上の光を我が眼に隠さず示してくれるから.
その光のうちには高貴な愛が,甘美な力と
聖なる素質をはっきりと露わにしている.
4


あの太陽は,命の糸を切り詰めようと
我が眼からいつも涙の河を流れ出させ,
橋や浅瀬,櫂や帆はもちろんのこと,
翼や羽さえ私を救い出すことはできぬほどだった.
8


その涙の河は深く,その水量は
豊かで,岸辺は遙かに遠く,
辛うじて其処へたどり着けるのはただ想いのみだった.
11


慈悲ピエタは月桂樹でも棕櫚でもなく,
平安なるオリーブの樹を私に差し出す.そして天を晴らし
涙を乾かして,私がなおも生きることを望むのだ.
14


COM. ―― 1. かつては泣き,今は歌う:Cf. Rvf. 229, 1. 生ける太陽:ラウラ. 12f. 月桂樹でも……オリーブの樹:月桂樹と棕櫚は勝利・栄光のシンボル.オリーブは平和のそれ.

2017/09/07


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