Petrarca, F., Canzoniere

228


愛神はその右手で我が左胸を
開き,心の只中へと緑の月桂樹を
植えつけた.その色はいかなる翠玉エメラルドをも
圧倒し色褪せさせるほど.
4


苦しみの犂,心より出る嘆息,
眼から降り注ぐ甘美な露が
その樹を栄えあるものとし,その芳しさは天にも及ぶほど.
このような香気を放つ樹が嘗て他にあったか私は知らない.
8


名声,栄誉,美徳と優雅,
天上の衣に包まれた敬虔な美が
あの高貴な樹の根.
11


場所を問わず私はそのような樹を,幸せな重荷を
胸のうちに見出す.そして真心こもる祈りを捧げ
その樹を崇め,聖なるもののごとく頭を垂れる.
14


COM. ―― 5. 苦しみの犂:vomer di pena. pena《苦しみ》ではなくpenna《羽,筆》と読む人々もいる.Vat. lat. 3195写本は以下のとおり. 6. 甘美な露:涙.

Vat. Lat. 3195の画像
Vat. Lat. 3195

2017/09/05


▲戻る