Petrarca, F., Canzoniere
212
夢のうちでは至福,また窶れゆくこと,
影を抱きしめ夏の
微風を追いかけることに満ち足りて,
底も岸もない海を私は揺蕩う.
波を耕し,砂を足場にして,風にものを書きつける.
4
太陽を眺め続けるせいで,今や
その輝きにより我が視力は消え去ってしまい,
私は彷徨い逃れる雌鹿を狩って追いかける,
足の萎えた,力なく遅い牛を引き連れて.
8
他の全てに盲目となり倦み疲れながら,
昼も夜も震えつつ追い求めるのは己の痛手.
ただ愛神と我が婦人,そして死だけを追い求める.
11
そうして二十年,私が手にしたものは
長く辛い苦しみ,涙,嘆息と心痛.
このような星の下,私は餌のついた針にかかったのだ.
14
COM. ――
4. 風にものを書きつける:Cf. ‘dicit: sed mulier cupido quod dicit amanti, | in vento et rapida scribere oportet aqua.’ (Catul. LXX 3f.)
5. 太陽:ラウラ.
2017/07/26
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