Petrarca, F., Canzoniere

198


心地よき微風ラウラが陽光の下に解きなびかせるのは
愛神が手ずから紡ぎ美しき目許へ編みかける黄金.
そして微風は他ならぬその髪により
我が心を縛り,軽き息吹を散らしてしまう.
4


彼の婦人のいるところへと近づけば,我が骨のうちの髄にも,
血管のうちの血潮にも震えを感じぬものはない.
その人こそは我が生と死を一緒に,幾たびも
脆き天秤の上に掛け計る方.
8


我が身に火をつける輝きが燃える様,
私を捕らえた縛めのときに右肩,
ときに左肩に閃く様を私は眺める.
11


捉えきれぬがゆえに私はそれを語ることが出来ない.
このふたつの光によって知性は損なわれ,
あまりの甘美に打ちのめされて力尽きるのだ.
14


COM. ―― 2. 黄金:ラウラの金髪. 4. 散らしてしまう:cribra. 文字通りには《篩にかける》. 9. 我が身に火をつける輝き:ラウラの双眸. 10. 私を捕らえた縛め:ラウラの金髪. 12. ふたつの光:9-11行で言われたラウラの眼と髪.

2017/07/25


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