Petrarca, F., Canzoniere

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あの緑の月桂樹ラウロのうちに吹く天上の微風ラウラ――
そこは愛神がアポッローンの胸を傷つけた所,
また我が首に甘美な軛をかけた所であり,
自由を取り戻そうにももはや手遅れ――
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その微風が私に及ぼす力は,メドゥーサが
古き巨壁を石に変えたときのそれ.
私は美しき縛めから自由になることの出来ぬままで,
その縛めに比べれば,琥珀や黄金はもとより太陽さえもかすむほど.
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私が語るのは金の髪,縮れた罠,
それが,謙譲以外の装備を持たぬ
魂を心地よくも捕らえ縛る.
11


ただその木蔭のみが私の心を氷にし,
白き恐れで顔を染める.
しかもその眼は我が身を大理石に変える力を持つのだ.
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COM. ―― 1. 月桂樹……微風lauroとl'auraとの音の類似によるラウラの暗示. 2. 愛神がアポッローンの胸を傷つけた所:クピードーがアポッローンの胸に矢を射ってダプネーに恋させた.ダプネーはアポッローンを逃れついに月桂樹と化した(Ov. Met. I 452-567). 3. 甘美な軛:Cf. ‘iugum enim meum suave est’ (Mt. 11, 30); ‘dedit collo dulcia vincla meo’ (Prop. III xv 10). 4f. メドゥーサが古き巨壁を石に変えたときのそれ:《古き巨壁》はアトラースのこと.アトラースは堅固な壁で果樹園を守っていたが(solidis pomaria clauserat Atlas | moenibus..., Ov. Met. IV 645f.),訪れてきたペルセウスを拒んだためにメドゥーサの首を差し出され岩山に変えられた.またグライアイの住む場所は《冷たいアトラースの麓,固い巨岩に守られた安全なところ》とされる(gelido sub Atlante iacentem | esse locum solidae tutum munimine molis, Ov. Met. IV 772f.) 11. その木蔭:月桂樹の木蔭.

2017/07/21


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