Petrarca, F., Canzoniere
193
私が心を養う糧は高貴な食物,
ユッピテルの
食事や
飲物さえ羨むべくもない.
なぜなら只眺めるだけで,他のすべての喜びの
忘却が降り注ぎ,レーテーを飲み干すほどだから.
4
彼女がものを語るのを耳にすればそれを胸に刻みつけ,
常に嘆息の
原因へと戻って来られるようにする.
愛神の手に捕らわれて,何処かも判らぬままに,
私は二重の喜びを一度に味わう.
8
天にさえも好ましい彼女の声がそのうちに
響く言葉の高貴さ・愛おしさは
それを聞いたことのない者には想像することもできぬほど.
11
そして技術と才覚,自然と天が
生命のうちに為しうる限りのものが
掌よりも小さき中に一時に顕れるのだ.
14
COM. ――
1. 高貴な食物:ラウラを眺めること.
4. レーテー:冥界を流れる忘却の河.
8. 二重の喜び:視覚と聴覚とふたつの喜び.
11. 聞いたことの……できぬほど:Cf. ‘che 'ntender no la può chi no la prova’ (Dante Tanto gentile 11 (Vita nuova XXVI)).
14. 掌よりも小さき中に:ラウラの顔のうちに.
2017/07/20
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