Petrarca, F., Canzoniere
191
神を見ることが永遠の生であり
それ以上を人は望まず,また望むことも許されない
――
そのように,婦人よ,貴女を見ることは,この短く
儚い生のうちで私を幸せにしてくれる.
4
目が心に告げることが真実ならば,
まさしく今の貴女以上に美しい人を私は見たことがない.
これこそは,我が思いを至福へ導き,
あらゆる期待,あらゆる望みに勝る時.
8
もしこの時がこれほど速く逃れ去るのでなければ
それ以上を望みはすまい.事実,香りのみで
生きる者があり
――こうした噂が信に足るなら
――11
また水や火に生きる者,味わいの全くないもので
味覚や触覚を満足させる者があるならば,
何故私は貴女を見ることを恵みとして生きられぬであろうか.
14
COM. ――
Vat. lat. 3196手稿でのこのソネットの欄外にはtr(an)s(criptus) p(er) meと書かれており(f. 1v),決定稿のVat. lat. 3195ではこのソネットを境に,ジョヴァンニ・マルパギーニの筆写が終わってペトラルカ自身の手で筆写が始まる(f. 38v).
10f.香りのみで生きる者:ガンジス川の源流付近にアストミ(Astomi)という口を持たず,蒸気や香気のみで生きる者がいるとプリーニウスが伝えている(Plin. NH VII ii 25).
2017/07/19
▲戻る
© 2016- Tetsufumi Takeshita All Right Reserved.