Petrarca, F., Canzoniere

182


燃える情熱で我が心に火をつける愛神は
また凍える恐怖でそれを圧し縮めもする.
期待か恐れか,炎か氷か,
そのいずれが勝るか心中に疑いを抱く.
4


心は激しい熱さに震え,寒空の下に燃え上がり,
常に憧れと疑いに満たされる.
まるで婦人が,素朴な服のうちに,あるいは
小さな衣の下に生身の男を隠しているかのごとく.
8


この苦しみのうち最初のものは昼も夜も燃えること.
これは他ならぬ私のもの.この甘美な災いがどれほどかは
詩文のうちにはもちろん思いのうちにも捉ええず.
11


だがふたつ目はそうではない.我が麗しき炎の態度は
誰に対しても等しいものだから.そしてその光の頂へ
飛翔しようと考える者が翼を広げてもそれは虚しいこと.
14


COM. ―― 2. 凍える不安:情熱が詩人の焦がれる愛の想いであるのに対し,こちらは不安や嫉妬.第4聯も参照. 7f. まるで婦人が……かのごとく:Cf. ‘timidus sum (ignosce timori) | et miser in tunica suspicor esse virum’ (Prop. II vi 13f.) 12. ふたつ目は:前聯で述べられたひとつ目の苦しみは詩人自身の焦がれる気持ち.ふたつ目はラウラの振舞いに起因して抱かれる嫉妬の苦しみ. 13. 誰に対しても等しい:誰をも等しく拒み撥ねつける.

2017/07/31


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