Petrarca, F., Canzoniere

134


平和を見出すことができず,さりとて戦う術もない.
恐れおののきまた希望する.燃え上がりまた凍りつく.
天上を翔け,また地に伏しもする.
虚空を掴み,また全世界を抱きしめる.
4


私を捉えた彼の者は,私を解放することも閉じ込めることもせず,
私を虜とすることもなければ,さりとて罠を解きもしない.
愛神は私を殺しもせず,鎖を外すこともせず,
私が生きるのを望まず,また苦境から救いもしないのだ.
8


私は眼を失ってものを見,舌を持たずに叫びを上げる.
死にたいと切望しながら,また救いを求めもする.
我が身を憎み,他人を愛しく思う.
11


苦しみを糧として,涙を流しつつ笑う.
生きるも死ぬも疎ましい.
こうした私の有様は,婦人よ,貴女のせいなのだ.
14


COM. ―― 4. 虚空を掴み:Cf. Verg. Aen. 2. 790-4. 5. 私を捉えた彼の者:愛神. 11. 我が身を憎み,他人を愛しく思う:Cf. Catullus, 85.
備考:F. Lisztによる作曲があります.


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