Petrarca, F., Canzoniere

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もはや泣き疲れ果てたその頬を,
我が親愛なる君よ,このひとつの上で休ませよ.
そして今は,己が追随者に色失わす
あの酷き者に御身を委ねることのないように.
4


今ひとつのもので,左側の,
愛神の使いが通った道を塞ぎ,
八月も一月も変わらぬ姿を示されよ――
長き道程に比して時は乏しいものゆえに.
8


三番目のもので,心苛むあらゆる想いを
清めてくれる,はじめこそ苦くも
お終いには甘き草の汁を飲まれよ.
11


そして喜びの貯えられる所には私を納めて頂きたい,
ステュクスの船頭を恐れずにすむように――
尤もこれが過ぎた願いでなければですが.
14


COM. ――贈物と共にアガピト・コロンナ(Agapito Colonna)へ宛てられたソネット. 2. このひとつの上で:贈物のひとつ.枕. 4. あの酷き者:愛神. 5. 今ひとつのもの:この第二の贈物が何なのか議論があるが,大方の註釈者は書物であると考える. 左側の:つまり心臓のある側. 7. 八月も一月も:夏も冬も. 9. 三番目のもの:杯. 12. 喜びの貯えられる所:記憶のうち.

2018/01/13


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