Petrarca, F., Canzoniere

38


オルソよ,未だかつてどんな流れも沼沢も,
あらゆる河がその荷を降ろす海も,
壁も山も影なす枝木も,
天を覆い世界を濡らす雲も,
4


またその他の,人の視野を一層妨げる
どんな障害も,あの麗しき両眼を覆い翳らす
顔衣ヴェールが私を呻き苦しませるほどのものはなかった.
その顔衣は「さあ,窶れよ,涙せよ」と言うかのよう.
8


彼女の眼が俯けば,それが慎ましさのためであれ,
誇りのためであれ,わが喜びはことごとく潰え,
時を待たずして私を死に至らしめるだろう.
11


そしてまた彼女の白い手も私を苦しめる.
その手はいつも忽ちに私を悩ましい気持ちにさせ,
私の目に対しての障壁となるものであった.
14


COM. ―― 1. オルソよ:ローマの貴族でペトラルカと親交のあったOrso dell'Anguillaraのこと(Rvf. 27も参照).このソネットは彼に宛てて書かれている. 6. あの麗しき両眼:ラウラの両眼. 9f. 慎ましさ……誇り:それぞれ原語はhumiltate, argoglio.

2017/05/26


▲戻る