Petrarca, F., Canzoniere

36


もしも死によって,我が身を地に圧しつける
恋の想いから解放されると考えたなら,
私はすでに己が手によりこの煩わしき四肢と
あの重荷とを地に棄て去ったことであろう.
4


だが私は怖い,それも所詮は嘆きから嘆きへと,
戦から戦へと移っていくことにしかならぬのでないかと.
それゆえ私には閉ざされた道を前に,
哀れ,半ば留まれども,半ばそれを踏み越える.
8


もうよき頃合であろう,無慈悲な心が
他の者たちの血に濡れ浸った
最後の一矢を放つには.
11


それを私は愛神と,聞く耳を持たぬあの者とに願うのだ,
その色に染まった我が身を離れて,
私を呼び寄せるのを忘れたあの者に.
14


COM. ―― 4. あの重荷:詩人を苦しめる恋の想い. 5f. それも所詮は……ないかと:Cf. ‘curae non ipsa in morte relinquunt’《死してなお苦悩は去らず》(Verg. Aen. VI 444). 7. 私には閉ざされた道:《道》は死に通じるそれ.《閉ざされた》というのはキリスト教で自殺が禁じられているため. 9. 無慈悲な心:愛神のそれ. 10. 他の者たち:これまで愛神の餌食となってきた哀れな恋人たちを指して. 12. それ:とどめの一矢を放つこと. 聞く耳を持たぬあの者:quella sorda. 死のこと. 13. その色に……:死の色,すなわち蒼白.

2017/04/25


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