Petrarca, F., Canzoniere

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アポッローンよ,もしもまだ,テッサリアの川辺で
貴方を恋の炎で燃やしたあの美しき憧れが生きていて,
あの愛しき黄金の髪を,
年月の経過のために,忘れてしまっていないならば,
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ぐずついた寒さと厳しく辛い天気――
それが続く間は貴方の貌は隠れてしまう――から
栄光ある聖き枝葉をお守りください,
かつて貴方が,その後私が捕らえられたあの枝葉を.
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そして辛い生のうちで貴方の支えとなった
恋の望みの力によって,
大気からこの沈鬱な靄を晴らしてください.
11


そうすれば我らは共に驚き眺めることでしょう,
我らの婦人が草の上に座し,
腕をかざして自らに影をなすさまを.
14


COM. ―― 1. テッサリアの川辺:ペーネウス河.テッサリアの河でこの河神の娘がダプネー.アポッローンのダプネーへの恋はオウィディウス『変身物語』(1. 452ff.)に綴られる 2. あの美しき憧れ:il bel desioダプネーに対するそれ. 8. かつて貴方が,その後私が:かつてアポッローンがダプネーに,そして今ペトラルカがラウラに恋すること. 9. 辛い生のうちで:ne la vita acerba. はっきりとわからない.考えうる可能性として(1)オリュンポスを追われてテッサリアのペライのアドメートス王のもとで過ごしたこと――アポッローンは息子であるアスクレーピオスがゼウスに殺されたことの復讐に彼の雷霆を作ったキュクロープスたちを殺したので,その罰としてアドメートスのもとで一年間下僕として過ごした――か,(2)他の神々と共謀してゼウスを天から吊るそうとした廉でポセイドーンと共にトロイアのラーオメド-ン王のために城壁を作った伝説に関し,アポッローンはイーデー山中で牧人として過ごしたという異説のことか.しかし(1)については親切に迎えられたのだから少し噛み合わないように思われるし,(2)についてはそもそも土地が異なっている.あるいはこうした伝説とは関係なく単に《恋の苦しみでつらい》という意味かもしれない. 14. 腕をかざして:et far de le sue braccia. 最終稿(Vat. Lat. 3195)ではこのようになっているが,Vat. Lat. 3196(9v)の方を見るとはじめfaccendo de suoi rami《その枝をかざして》とあったのを取り消して行間に7(=et) fare dele sue bracciaと修正を行ったことがわかる.Cf. Contini, G., Saggio d'un commento alle correzioni del Petrarca volgare, Firenze, Sansoni 1943: p. 23(SantagataVarianti e altra linguistica. Una raccolta di saggi(1938-1968), Torino, Einaudi 1970に採録されたものから引用しているためページ番号が違う).

Vat. Lat. 3196の画像
Vat. Lat. 3196 9v

2017/02/23


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