Petrarca, F., Canzoniere

26


荒波に打ち負かされた船が陸地にたどり着き,
悲しみの色に染まった人々が
岸にひれ伏し神に感謝を捧げるときでさえ,
その幸せは私以上のものではなく,
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またその首に縄を括りつけられながらも
牢獄から解放された者の幸せでさえ,
我が主とかくも長く戦った剣が
帯から解かれた様を見る私には及ばない.
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愛を詩で讃える貴方方は誰しも皆,
かつて道を逸れた恋の歌の
すぐれた織工に栄誉を授けたまえ.
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なぜなら,選ばれた者たちの王国では
回心した魂の方が栄光多く,その他の
九十九人の完き者より尊いとされるから.
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COM. ―― 2. 悲しみの色に染まった人々:大方は船に乗っていた人々と解するが,岸辺で難船の惨状を目にした人々ととる解釈もある.Cf. ‘nec minus haec laeti trahimus solatia, quam si | praecipiti convulsa Noto prospectet amicam | puppis humum’ (Stat. Theb. II 193-195) 7. 我が主:愛神. 剣が帯から解かれた……:戦いの終わり. 12. 選ばれた者たちの王国:天国のこと. 13f. 回心した魂の方が……:Cf. Lc 15, 4-7.

2017/11/21


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