Petrarca, F., Canzoniere

21


おお我が甘美なるかたきよ,その麗しき眼との
和平を得るべく私は貴女に数知れぬほど
この心を差し出した.だが気高い貴女は
かくも低き方を見ることを潔しとはしない.
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たとえもし他の婦人がこの心を望み求めても
頼りなく空しい希望のうちに生きるのみ.
貴女の意に沿わぬことは私にも蔑みの的ゆえ
もはやこの心は嘗てのように私のものではありえない.
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今この心が私によって放逐され,そして不幸な追放の身の
何ほどかの援けを貴女のうちに見出せないとなれば,
ひとりで居ることも他の婦人の呼ぶ方へ行くこともできず,
11


自然に定められた道を失ってしまうだろう.
このことは私にも,そして心が貴女を愛するだけ一層
貴女にとっても重い罪となることだろう.
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COM. ―― 1. 敵よ:恋人のこと. 6. 生きるのみ:底本のSantagataは《他の婦人》が主語であると解釈しているが《(詩人の)心》を主語と考えた方が話が通りやすいように思われる. 12. 自然に定められた道を失ってしまうだろう:poria smarrire il suo natural corso. 死に絶える意味. 13. 心が貴女を愛するだけ一層:心を擲った詩人にもそれを拒むラウラにも罪となるが,心が焦がれ求める相手がラウラである分,後者にとって重い罪となる.Cf. ‘e la colpa vostra sarà tanto più grave della mia, quanto egli ama più voi che me’ (Leopardi Google_Books).

2017/11/10


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