Petrarca, F., Canzoniere

15


疲れ果てた体をどうにかこうにか運びつつ
一歩一歩と行くごとに来し方を顧みて,
貴女のところから吹く風に安らぎを得ては
こう呟き先へと進む,「ああ悲しいかな」と.
4


そして後にして去るあの甘美な善のことや
長い道程,短いこの命に思いを馳せながら
呆然として色を失い足を止め,
涙をこぼし眼を地に落とす.
8


こうして悲嘆の只中にある我が身を
襲うひとつの疑念――「どうしてこの四肢は
その生気スピリトから離れて生きられようか」
11


だがこの私の問いに愛神が答えて言うのだ――
「忘れたのか,これが人間の境遇を尽く越えた
恋人たちの特権であることを」
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COM. ―― 3. 貴女のところから吹く風:ラウラの居るところ.Laura = l'auraのイメージ. 5. 甘美な善:ラウラのこと. 14. 恋人たちの特権:ペトラルカは《離れていながら離れた者の声を聞き,姿を見る》というウェルギリウス(Aen. IV 83)を引いてこれをprivilegiumと表現している(Fam. VII 12, 5; XII 4, 8; Secr. III (ed. Carrara, p. 166)).

2017/11/12


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