Petrarca, F., Canzoniere

229


かつては歌い,今は泣く.そしてかつて歌うことから得たのに
劣らぬ悦びを,今は泣くことから得ているのだ.
なぜなら我が感覚はただただ高みに憧れて,
結果にあらず原因を目指すものだから.
4


そこからくる優しさと厳しさ,
ときに無慈悲な,ときに慎ましく恭しい振舞い,
私はそれらを等しく耐え忍び,しかも重荷とすることもなく,
蔑みのきっさきが我が鎧を破ることもない.
8


だから私に対しては普段の態度をとり続けてほしい,
愛神よ,婦人よ,またこの世と我が運命よ.
私が不幸になることは決してないと思えばこそ.
11


生きるにせよ死ぬにせよ,衰えゆくにせよ,今の私の有様よりも
高貴な有様は,月下の世界にありはしない.
それほどまでに我が苦しみの根は甘美.
14


COM. ―― 4. 結果:ラウラからもたらされる喜び,苦しみ. 原因:ラウラ. そこから:その原因から.つまりラウラの与える. 13. 月下の世界:地上世界.

2017/09/01


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