Petrarca, F., Canzoniere

75


あの美しき眼によって私が受けた傷は
ただその眼自身にのみ癒すことのできるもの.
薬草や魔術,我らの海の
彼方より来る石の力も及ばない.
4


その眼は他の愛への道を私から切り離してしまい,
この魂を喜ばすのは只その眼にたいする甘美な想いだけ.
そしてその想いを弁舌が追いかけようと望むとして
嘲られるのは舌にあらず,その伴の方.
8


あの眼こそが我が主の軍旗を
あらゆる場所で――とりわけこの胸のうちで――
勝利の栄光に輝かせる.
11


あの眼こそが,燃え立つ火花とともに
常に我が心のうちにあり続け,
ために私はその眼を語って疲れることを知らぬのだ.
14


COM. ―― 3. 薬草や…:Cf. Ov. Met. I 523. 我らの海:地中海のこと. 8. その伴:愛神.Cf. Rvf. 74. 9. 我が主:愛神.

2017/12/22


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