Petrarca, F., Canzoniere

57


我が幸運の訪れる足取りは遅く緩慢,
望みは不確か,憧れはうずたかく募り,
そのため諦めるのも待ち続けるのも口惜しい.
それでいて去り行く足取りは虎より軽やか.
4


ああ,雪は温かく黒くなり,
海には水が失せ,ありとある魚がアルプスに溢れ,
太陽はその現れるところ,他ならぬユーフラテスと
ティグリスの源の上に身を横たえることだろう,
8


私がここに平和や休戦を見出したり,
私に対して不当な共謀をした
愛神や婦人がその態度を改める前に.
11


仮に何ほどかの甘美を得ても,それは長い苦しみの末で,
その味わいとて皮肉なことに消えてしまう.
しかも彼らの恵みからはそれ以上のものは得られないのだ.
14


COM. ―― 4. 虎より軽やか:Cf. ‘ocior et caeli flammis et tigride feta | transcurrit’ (Luc. V 405f.) 5-8. ああ……ことだろう:第3聯に述べられることの非現実性・不可能性を強調するため,ありえない事柄を列挙する. 13. 皮肉なことに:per disdegno. 長い苦しみが災いして幸せも束の間に消えてしまう.

2017/08/04


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