Petrarca, F., Canzoniere
39
私は恐れる,愛神と我が死とが宿る
あの麗しき眼の攻撃を.
子どもが鞭から逃げるように私がその眼を逃れ,
最初に逃げ出してからすでに長い時が経った.
4
我が身を常のごとく冷たい石に変え
感覚を霧散させてしまう者に
会わないためならば,我が望みに上れぬような
高く険しい場所はこれから先にありはすまい.
8
それだから,我が身を溶かす者に近づくまいと
あなたの方を顧みるのが遅れたとしても,
その過ちは許されざるものではなかっただろう.
11
更に言えば,人の逃れ去るその許へと立ち返ること,
これほどの恐れを心から取り払ったことは
我が忠誠の軽からぬ証となったのだ.
14
COM. ――
5f. 常のごとく……しまう者:ラウラのこと.Cf. Rvf. 23, 78-80.
8. 高く険しい場所:Rvf. 2, 12にも類似の表現(poggio faticoso et alto)があってそちらは《理性の座》を比喩的に表しているが,こちらは必ずしもそう考えることはない.
10. あなたの方を:このソネットが宛てられた人物.一説には枢機卿ジョヴァンニ・コロンナだが,あるいはラウラ自身とも考えられる.
2017/07/05
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