Petrarca, F., Canzoniere
2
優雅で巧みな復讐をなすため,
また数多の屈辱を一日のうちに晴らすため,
愛神は密かにその弓を再び取り上げた,
さながら傷を負わす時と場所をうかがう狩人の如く.
4
私の力は心に集中して
其処と両眼を守っていた.
そのとき其処へ死に至る一撃が深々と降りてきた
――
その場所ではどんな矢も折れてしまうのが常だったのだが.
8
かくして最初の一撃にわが力は乱されて,
必要に駆られて武器を執るための
力も時間も持たなかった.
11
また賢明にも険しく高い山へと
その責苦から退避することさえできなかった
――
今ではその苦しみから身を守ろうとしても力及ばないのだ.
14
COM. ―― 3. 密かに:《愛神は狡猾にも隠れた業で傷つける》(Ov. Am. 1. 2. 6).
5. 私の力:virtute. 理性と意志の力.6. 両眼:映像により駆り立てられた恋の想いが,眼を通って心へ達する.
12. 険しく高い山:理性の座.Cf. Cic. Tusc. 1. 20; Plat. Tim. 44D, 70A.
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